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廃棄される資源は“未来の負債”になる

  • 執筆者の写真: KOBAYASHI
    KOBAYASHI
  • 1 日前
  • 読了時間: 3分
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企業の「いま」は、資源の使い方で簡単に赤字になる時代ではありません。だからこそ油断します。調達→使用→入替→廃棄

——この最後の一歩に見えない債務がたまる。費用計上されないまま残るのは、回収の手間、情報漏えいの火種、評判の毀損、そして説明責任の空白です。

要するに「使い終わりを設計していない資源」は、未来の負債です。


見えないコストは、決算書に出てこない

購入時は稟議があり、減価償却にも目が行きます。一方で、廃棄に伴う実務コストは部門内の善意に吸収されがちです。誰が回収し、どこでデータを消去し、証跡をどう残すのか。

現場の5分、10分は費用化されないまま累積し、気づけば「更新できない」「置き場がない」——在庫ならぬ“死蔵資産”を作ります。つまり、調達の合理化だけでは運用は整わない。

ライフサイクルの最終工程に、最初からコストと役割を割り付ける設計が必要です。


「使い終わり」がない運用は、いつか詰まる

PCや周辺機器、廃トナー、ケーブルひとつまで、社内の出口が曖昧だと、更新のたびに詰まります。資産管理台帳は最新でも、回収のリードタイムが設計されていなければ現場は動けません。出口設計の原則はシンプルです。

誰が「廃棄判定」をするか(基準と権限)、どこに「一次集約」するか(場所と頻度)、いつまでに「無害化・証跡化」するか(SLA)。この三点が明文化されていれば、入替の速さは劇的に変わります。


データの痕跡が残す“情報負債”

機器の廃棄は、情報セキュリティの延長線上にあります。OSを初期化しただけのPC、保管庫に積まれたHDD、退職者の私物化——いずれも消したつもりの典型です。

求められるのは「誰が・いつ・どうやって無害化したか」を示す検証可能な証跡。作業ログ、シリアル番号の突合、媒体ごとの処理区分(再利用/素材化/適正廃棄)まで、後から第三者が追える形で管理することが、将来の説明責任を守ります。


価値の階段:修理→再利用→再販→素材化

廃棄はゴールではなく価値回収のプロセスです。機器は、修理で寿命を延ばし、社内再利用で稼働率を上げ、要件に合わねば外部で再販、難しければ素材として循環させる。

どの段でも法令と安全性を満たすことが前提で、社内ルールに沿った意思決定が必要です。ここで重要なのは、アップサイクルや再販を思想のみで選ばないこと。品質・安全・証跡の三点が担保できる選択肢を淡々と仕組みに組み込む。それが企業にとっての現実解です。


KPIは「買ってから捨てるまで」

ライフサイクルが設計できているかは、KPIで見えます。

E2Eリードタイム:調達日→回収・無害化完了日までの平均日数

無害化証跡の網羅率:回収対象に対する証跡付与率

死蔵率:稼働予定のない保管機器比率

この三つを四半期で追えば、ボトルネックは自然に浮き上がります。サステナビリティの掛け声より、運用の速度と透明性が部門横断の合意を生みます。

今日から始める制度化

完璧を狙うと始まりません。まずは1つの拠点・1つの機器カテゴリ・1つの処理導線だけを制度化する。たとえば「ノートPCは第1金曜に情報システム室へ集約→当日中に無害化→証跡を台帳へ」という週次リズムです。運用が回り始めたら、対象範囲を広げる。最小設計→反復→拡張の順で、負債は資産に変わります。


それでも“廃棄”が必要な日は来る

すべてを延命できるわけではありません。だからこそ、プロセスは人に依存させない。

作業担当が替わっても、同じ品質で回るように、判定基準、集約場所、SLA、証跡の取り方を文書とラベルで残す。未来に対して誠実であることは、華やかなスローガンではなく、地味な手順の標準化そのものです。

廃棄を終わりではなく責任の完了にできた企業から、更新は軽くなり、資源は循環の線路に戻ります。

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