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廃棄しない選択~社内PCの第二の人生活用法~

  • 執筆者の写真: KOBAYASHI
    KOBAYASHI
  • 10月24日
  • 読了時間: 4分

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最初に結論です。社内PCは「現役→準現役→補助→退役」という段階で役割を移していく設計さえ用意すれば、廃棄を遅らせながら業務の安定性とコストの見通しを同時に良くできます。新品の追加や一斉入れ替えだけが正解ではありません。ここからは、「なぜ捨てない方が合理的なのか」「何に使えるのか」「安全面で何を外さないか」「費用感はどう変わるか」「どう始めるか」を、お話ししたいと思います。



なぜ「捨てない」が経営の合理性になるのか

PCライフサイクルの費用は、購入代だけではありません。設定、配送、回収、再設定、ユーザー教育、そして突発的なダウンタイム。毎年のように入れ替えるほど、見えない人件費と時間が跳ね上がります。一方、性能要件が厳しい部署とそうでない部署は同居しています。動画編集や仮想化が必要なチームの隣で、ブラウザ中心の事務は軽い負荷で十分。高性能が必要な席にだけ新機種を回し、それまで使っていたPCを負荷の軽い席へ段階降格させる。これが「社内ローテーション」の基本発想です。買う台数が減るだけでなく、入れ替え時の混乱も抑えられます。



第二の人生はどこで輝く?実用シーンのヒント

再活用の良し悪しは、用途との相性で決まります。例えば、ブラウザ/Office中心なら数年前のCPUでも十分にこなせます。社内受付の来訪者記帳端末、会議室のTeams/Zoom専用機、教育用の演習端末、在庫管理のラベル発行機、製品マニュアル閲覧の閲覧専用機、RPAの実行ノード、バックアップ検証用の犠牲機、ヘルプデスクの貸出機。オフライン前提の掲示用サイネージや、テスト用の素振り環境も相性が良い領域です。重要なのは「現役の席に座らせない」こと。つまり、最重要業務から一歩ずつ遠ざけ、故障時の影響半径が小さい場所に配置していきます。



品質と安全の最低ライン──ここだけは妥協しない

役割を移す前に、健康診断をします。ストレージのS.M.A.R.T.値(ハードディスクやSSDの健康状態を示す目安)やバッテリーの劣化、異常な発熱やファン騒音がないか。起動ドライブをSSDに換装するだけで体感は大きく改善します。メモリは同時に開くアプリ数に直結します。データ保護は最優先です。席替え前にユーザーデータを移行し、端末側は初期化とデータ消去を実施します(社内規程に沿って、証跡が残る手順を)。OSやアプリはサポート期間内のバージョンで、更新が止まらない構成に。社外持ち出しをしない端末には、権限やポリシーで機能を絞ると運用が安定します。ライセンス条項の確認も忘れません。OSの再インストールや移管は契約形態により扱いが異なります。社内規程・ソフトウェアの利用条件に合わせて進めましょう。



コストの見方を変える【買わないで整えるという投資】

「古いPCを直すより新しい方が安い」という見方は、しばしば“導入の瞬間”だけを切り取っています。ローテーション設計があると、①高負荷席は計画的に更新②旧機は軽負荷席へ段階移動③退役直前は貸出機や検証機として使い切るという循環が生まれます。この循環が強いほど、「足りないから急いで買う」場面が減り、突発的な調達コスト・配送待ちによる停止リスクも下がります。資産台帳上も、役割交代で稼働率を保てれば、単なる遊休化を避けられます。結果として、廃棄費用や回収調整の手間も先送りできるのです。



現場が回る工夫…ルールではなく段取りで決める

再活用がうまくいく現場には、難しい規程より「段取り」があります。・誰が健康診断してOKを出すのか。・どの席に移し、いつまで使うのか。・不調が出たらどこに連絡するのか。文書は一枚で構いません。棚卸しは四半期に一度。「Aの席は次回の更新対象。外したPCは受付端末へ。その先は貸出機へ」と矢印で描ける程度の具体さが、現場では一番効きます。



体感価値を上げる小技「軽くする」「冷やす」「汚さない」

体感は、CPUの数字よりも詰まりで決まります。起動ドライブのSSD化、不要常駐の削減、埃の清掃、サーマルパッド/グリスの適正化、電源設定の見直し。ちょっとした整備で「まだ使える」に変わります。また、用途ごとにユーザーを分ける役割アカウントは、設定の乱れを防ぎます。閲覧専用端末なら、書き込み権限を狭め、復元機能を入れておく。貸出機は返却時の初期化を自動化する。毎日のこまめなリセット習慣が、再活用の寿命を延ばします。



捨てないことがブランドになる

来訪者が受付で触れるPC、見学者が覗く工場のサイネージ、貸出用の学習端末。これらが清潔に整備されていれば、企業の余裕と配慮は自然と伝わります。社内で使い切る姿勢は、そのまま調達方針やCSRの一貫性として外部にも見えます。無理に胸を張る必要はありません。静かに整っていること自体が、信頼のサインです。



小さく始めて、早く確かめる

最初の一歩は難しくありません。健康診断→SSD化→一台だけ席替え→一週間の試用。現場が「これならいける」と感じたら、台数を増やします。ローテーションの地図が一度できれば、次からは迷いません。第二の人生は、PCの話であると同時にマネジメントの話です。捨てる判断を遅らせ、役割を与え続ける。結果として、コストも停止リスクも、ゆっくり下がっていきます。

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