『3年ごと買い替え』はもう古い?PC寿命の新常識
- KOBAYASHI

- 9月12日
- 読了時間: 4分

新品を3年で更新する——多くの企業が採用してきた慣行は、調達の簡便さと予算編成のしやすさに支えられてきました。
けれど、働き方がクラウド前提に変わり、端末性能の頭打ちとセキュリティ運用の高度化が進んだ今、「年数だけで一律更新」は最適解ではありません。
この記事では、年数基準から状態基準・目的基準へ発想を転換するための考え方と、現場で実行しやすい判断軸を提示します。アップサイクルや中古の押し付けではなく、買う・直す・活かす・手放すのバランスでムダのない寿命を設計するのが狙いです。
寿命の定義を分解する——「機械的」「体験」「安全」「環境」の4つ
ひと口に寿命と言っても、実はいくつもの側面があります。
機械的な寿命:部品そのものの耐久性や故障率。
体験としての寿命:起動やアプリの動作が遅くなり、仕事に支障が出るタイミング。
安全面での寿命:Windows更新やセキュリティ修正が提供されなくなり、ウイルスなどに弱くなる時点。
環境的な寿命:資源やCO2排出の観点から見て、どこまで使い続けるのが最適か。
「どの寿命が尽きているのか」を見極めると、年数だけで判断するよりも合理的になります。
「年数」から「測れる指標」へ——現場で使えるヘルスチェック
体感で「遅い」と感じるだけではなく、数値で把握することが大切です。起動にかかる時間、Web会議1時間あたりのフリーズ回数、ファイル検索の待ち時間などを定期的に計測すれば、遅いから買い替えるではなく遅い原因を直すか、用途を替えるか、それとも買い替えるかを冷静に判断できます。
“直して延ばす”が合理的になる条件
ノートPCのバッテリーは消耗品ですし、ストレージ(SSD)は長く使うほど劣化します。しかし、バッテリーを交換すれば持ち運び業務に再投入できる、SSDを換装すれば処理速度が劇的に改善するといったケースも多くあります。交換費用と新規購入費用を比較し、作業にかかる時間まで含めて検討すれば、延命の投資対効果は明確になります。
ポイントは、最初から交換しやすい機種を選んでおくことです。内部の部品にアクセスしやすいモデルを導入すれば、寿命の伸びしろが大きくなります。
役割を替えて使い切る…リレー方式の再配備
高負荷の業務で限界を迎えたPCでも、軽い作業専用に役割を替えれば現役です。開発や企画で酷使した端末を、事務作業や受付用PCに回す。リモート会議用ノートを固定席の資料閲覧用に置き換える。「一台で二役三役」を前提にすれば、買い替え台数を自然に減らせます。
安全面での寿命は『“サポート切れ』で決める
ここだけは妥協できません。Windowsの更新が終了したり、セキュリティ修正が届かなくなったPCは、その時点でリスクが高まるため更新対象にすべきです。逆に言えば、サポートが続いている間に性能を改善できるなら、延命や再配備の余地は十分にあります。
端末の性能不足を別の仕組みで補う
PCが重く感じても、処理をクラウドに任せる仕組み(仮想デスクトップやクラウド上の開発環境など)を導入すれば、手元のPCは画面表示と操作だけを担えばよくなります。これにより、「PCが古い=寿命」という単純な構図から抜け出せます。もちろん、通信の安定性や利用料とのバランスも必要ですが、買い替えを減らす選択肢のひとつになります。
「導入から廃棄までの総コスト」で見る——“安く買う”から“長く使う”へ
PCの費用は購入価格だけではありません。
初期設定やデータ移行にかかる時間と人件費
ソフトウェア更新やサポート契約
故障や修理対応
電気代や周辺機器など運用コスト
最後に廃棄やデータ消去の費用
これらをすべて合計したものを「TCO(総保有コスト)」と呼びます。長く安心して使い切ることは、TCOの削減と環境配慮の両面で合理的です。
手放し方の設計が寿命を変える
寿命の最後は単なる廃棄ではなく、データ消去 → 社内再配備 → 社外譲渡/売却 → 適正処理の順で考えるのが理想です。データ漏えい防止のための標準消去ルールと、処理証明を残す仕組みを整えると、安心して更新・廃棄ができます。
実務に落とす:更新ルールは「年数+性能+安全」の三本柱
最終的には、次の3つを明文化しておくと迷いがなくなります。
年数の目安:例として「4年を目安。ただし状態が良ければ延長」
性能の基準:起動や会議の安定性など。基準を下回れば直す・替えるを判断
安全基準:Windows更新が切れたら即交換
この三本柱に「部品交換の上限額」と「再配備の優先度」を加えると、3年で全台入れ替えるから必要な部分だけ賢く更新へ移行できます。
新しく買う時点で寿命の長さを選ぶ
導入時から、部品交換のしやすさやメーカーのサポート体制を評価ポイントにしてください。寿命は購入直後から決まります。「長く使える作り」を持つ機種を選ぶことこそ、最終的にいちばんコストを抑える方法です。




コメント