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自動更新されたのは「もう使っていない」サブスクでした~見えないコストの正体~

  • 執筆者の写真: KOBAYASHI
    KOBAYASHI
  • 9月10日
  • 読了時間: 3分
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ある請求書に目をやる。差出人は知らない会社、使った覚えもないサービス。けれど、社名は間違っていない。誰かが契約したのだろう。誰かが使っていたのだろう。けれど──誰も知らない。

これは、一部の企業だけの話ではありません。いま多くの企業で、SaaS契約のブラックボックス化が進んでいます。


SaaSってなに?なぜ増えているのか

まずSaaSとは何か、改めて整理しておきましょう。SaaS(Software as a Service)とは、ソフトウェアをインストールせずに、インターネット経由で使えるサービスのこと。たとえば、Google Workspace(旧G Suite)、Dropbox、Slack、Zoomなどがそれにあたります。こうしたツールを月額や年額で契約し、社内で業務に使うスタイルがいま主流になっています。クラウドなのでどこでもアクセスできて便利、アップデート不要、コストも抑えられる…そんな理由から、中小企業にも広く普及しました。ただ、その一方で見過ごされがちな落とし穴もあるのです。


SaaS契約が“ブラックボックス”になる構造

SaaSの多くは、申し込みから利用開始までが非常に手軽です。クレジットカードさえあれば、個人でトライアルに申し込んでそのまま本契約に移行することも可能。その結果契約者はAさん(情シス)使用者はBさん(営業部)請求先はCさん(経理)というように、役割が分断され、全体像を誰も把握していないというケースが多発しています。さらに管理者アカウントは誰のものか不明請求の明細はPDFで個人アドレスに届く解約手続きに必要な情報が社内にないといった状況が重なると、契約が誰のものでもないまま自動更新され、課金だけが続いてしまいます。


「使っていないけど、解約もできない」

SaaSの多くはサブスクリプション(自動更新)モデルです。放っておけば、使っていなくてもお金は引き落とされます。この状態に気づくのは、たいてい経理です。年間契約が自動更新されていた場合、数万円〜数十万円の無駄なコストが発生することも珍しくありません。


情シスの仕事とは限らない

こうしたSaaS契約の管理は、情シスに任せきりにされがちです。しかし実態は、情シスだけでは追いきれないのが普通です。利用は現場が主導、請求は経理、契約者はそのときたまたま対応した人…なんてこともままあります。組織のどこにも全体管理する責任者が存在していない。これが、ブラックボックス化の本質です。


対策は「ツール導入」よりも「流れの統合」

「契約を見える化しましょう」「SaaS管理ツールを導入しましょう」そんな提案は多いですが、本当に必要なのは契約の流れそのものを整えることです。

たとえば

・SaaSを契約導入する前に、必ず「情シス経理現場」の三者で情報共有

・契約時には、会社アドレスや共通アカウントを使うことを徹底

・退職者のアカウントにSaaS契約がひも付いていないかを確認する「棚卸しチェック」をルール化

・契約リスト(簡易でもOK)を定期的に全社で見直す文化をつくる

まずは、誰でも見られる契約リストがある状態をつくる。これがスタートラインです。


小さな放置が、大きな損失につながる

SaaSは非常に便利です。しかし、便利なものほど管理を怠ると高くつくということを、私たちは知っておくべきです。

「知らない請求が来ていた」

「もう使ってないサービスを、誰も止められない」

「契約者がいなくて何もできない」

こうした事態が起きてしまう前に、SaaS契約が誰のものなのか、本当に必要で現役のものなのか、見える状態を保つこと。

それが、企業がサブスク時代を安心して進んでいくための、静かだけど大切な一歩です。

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